今日の日経7面から。

リストラというのは、経営者にとってもっとも「やりたくないこと」である。
当たり前だ。

一人の人間の人生を大きく変えかねない。
恨まれるかもしれないし、そもそも会社の人材との関係を断ってしまうのだ。
やらずに済んだらそれに越したことはない。

希望退職というのは、wikipediaにも書かれているように、社員をクビにするというよりは、良い条件を提示して、定員を設定して「募集」するものである。
この定員に満たなかった場合は「退職勧告」や「整理解雇」が行われることが多いようだ。

ただ、基本的には「解雇」という形は取らない。
というか、日本は解雇規制が強いので、解雇ができるのは会社が赤字になっていたり、のっぴきならない事情があるときのみだ。

さて、今回日本たばこ産業(JT)は、2014年3月期に過去最高益を見込んでいる。
業績は好調。

そんな中で、リストラを行う。
国内の9工場中4工場を閉鎖し、本社従業員の2割弱にあたる1600人の希望退職を柱とするリストラに取り組むという。

小泉社長は1年前から社長になった。
その前はタバコ事業の責任者で、その頃から虎視眈々と(?)準備していたようだ。
曰く、

「日本市場は利益の4割超を稼ぐ最も重要なマーケットだが、年3%ずつ縮小するという経営リスクが見える」

と。
そして、経営者として、素晴らしい名言に続く。

「工場閉鎖は経営者として最も苦しい決断で誰もやりたくないが、何の手も打たなければ不作為の罪で経営者失格だ」

先を見据えて、今のうちにコスト削減を行っておく。
そして、その哲学が素晴らしい。

「やってはいけないのは会社が赤字になり、キャッシュがないときにリストラをすることだ」

なぜか。

「社員の第二の人生へのサポートが手薄になる。社員に誠意をもって対応できる最高益の今こそ、リストラをやるべきだ」

こうやって考えられる小泉社長はすごいと思う。
勝って兜の緒を締めよというか、最高益に浮かれることなく、苦しくて先延ばしにしがちなことに手を付ける。
立派な人だ・・・。


イケイケドンドンの経営者で、将来に希望を示すことが大事な場合もあるかもしれない。
たとえば、グリーが一番輝いていた2年前、社長も社員もノリに乗っていて、

「日本でもガンガン稼ぐ、海外でもこれから稼ぎまくるからお前らついて来いや」

と言わんばかりの勢いで、採用しまくっていた。
もちろん伸び盛りのベンチャーだ。

勢いのあることを言って、盛り上げていくことが大事だったんだろう。
でも、そこでグッとブレーキをかけて、

「ちょっと楽観的なんじゃないか」

といったん考え直す機会があの時のグリーにあったなら、「人件費が膨らんでリストラ」みたいなことにもならなかったんじゃないかな。

ベンチャーと古い大企業を比べるのは難しいが、調子がいいときに、「ダメになったときの布石を打つ」という小泉社長の英断は、勝って兜の緒を締める好例として記憶に残しておきたい。


最後に、大日本帝国海軍の秋山真之の 「連合艦隊解散の辞」の一節を引用する。

神明は唯(ただ)平素の鍛錬に力め戦わずして既に勝てる者に勝利の栄冠を授くると同時に、一勝に満足し治平に安んずる者より直に之を褫(うば)う。

古人曰く、勝って兜の緒を締めよと。

これは、日露戦争に勝利した直後に発言したものだ。

本の紹介

坂の上の雲 全8巻セット (新装版) (文春文庫)

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「坂の上の雲」と「竜馬がゆく」はたしかに長いんだけど、人生で一回は読んだ方がいいと思える本である。
秋山真之は、「坂の上の雲」の中心となる人物であるが、この本を読むと、日本という国が誇らしく思えるようになった。
国のために身を尽くした偉大な先人に敬意を表したいと。
自分が日本を良くするためにできることはなんだろうか?と大きなことを考えてしまう本でもある(笑)